私はこれまで千葉大学でドローンの研究を約20年近く行ってきまして、ドローン関連で博士13名、修士30名を輩出しました。2001年には日本で最初の小型無人ヘリの完全自律飛行にも成功しました。こうした研究成果をもとに、2013年11月に大学発ベンチャーの株式会社自律制御システム研究所を創業しました。創業から5年後の2018年12月、東証マザーズ市場にドローン業界では最初に上場を果たしました。 創業者の役得として得られた原資をもとに、知財やインキュベーション施設など有形・無形にお世話になった千葉大学に恩返しをしたいと思っておりました。
ドローン産業は目下、激烈な国際競争の真っただ中にあります。 日本がドローン産業で世界のトップレベルを維持するためには人材育成が不可欠で、日本の拠点として千葉大学に先進的なドローン研究センター的なものができないかと思案をしておりました。

会社経営を通じて痛切に感じたことは「モノづくり」は「人づくり」であるということで、優秀な人材が集まってはじめて世界と競争ができます。あるいは、千葉大から起業する若手人材の育成もできればと思います。ドローン研究は、専門分野としてはロボット工学、機械工学、電気電子工学、情報通信工学、航空工学などを背景として、ドローンの自律飛行制御などのコア技術、センサ、駆動系、バッテリなどハードウエアや、コンピュータソフトウエア技術、画像処理、人工知能、ビッグデータ、IoT、クラウド、高速通信など総合工学の研究領域です。

とくに、現在のドローンは平衡感覚と運動神経に優れた小脳型ドローンですが、近未来型ドローンは学習・知能・判断機能を有する大脳型ドローンが求められています。2019年3月で終了した、内閣府プロジェクトImPACTのタフ・ロボティクス・チャレンジ(飛行ロボット分科会座長:野波)で一緒に研究してきました、工学研究院 劉浩 教授とこの件についてご相談をしてきました。さらに、2018年12月末には関 研究担当理事ともご相談をさせて頂きました。その後、大学サイドで準備を重ねて頂きまして、2019年10月にインテリジェント飛行センターオープンとなりました。

2030年頃の「空の産業革命」、「空の移動革命」を見据えて、インテリジェント飛行センターへの期待は、鳥のように知能を持ったドローンや環境に優しい静かなドローン、パイロットレスの垂直離着陸型乗客用ドローン、何百機も編隊を組んで整然と飛行する群ドローン等、SFの世界が現実となるようなワクワク感のある最先端の研究でイノベーションを創出することです。

そして、学際的総合工学としての教育プログラムで、世界トップレベルの人材育成を願っています。このために、微力ながら先端ロボティクス財団は尽力させて頂きます。最後に、インテリジェント飛行センター開設までのご尽力に際して、関 研究担当理事、佐藤 工学研究院長、劉 教授に心からお礼申し上げます。また、財団の寄付にあたり、寄付のご賛同を頂きました東京大学エッジキャピタル(UTEC)郷治代表取締役社長に御礼申し上げます。